研究発表

〔2020年度の研究の一部紹介〕
 2020年、新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)を契機として、現代世界はまさに激動しました。
 世界中で失業者があふれる1929年恐慌を彷彿とさせる経済危機は今なお続いています。また中国・習近平政権のパンデミックを奇貨としたアメリカへの攻勢とこれへのアメリカ政府の対抗によって世界中で新たな戦火がくすぶり、とりわけここ東アジアでは軍事的緊張が極めて高まっています。
 全世界をおおう経済危機と戦争的危機、そして地球温暖化の進行による災害の深刻化。これらの矛盾はこれまで低賃金・不安定雇用のかたちで貧困を強いられてきた人々や戦火や圧政に苦しめられてきた人々に真っ先に集中しています。
 私たち社会と環境を考えるサークルSEEDは、この現実に憤激をわきたたせて研究活動にとりくんできました。

●政府の新型コロナ対応を問う

 2020年4月からの安倍政権、菅政権の新型コロナ対応を、新聞記事を批判的に検討しながら見てきました。コロナ対策予算の内実や医療・介護現場の実情に迫るなどしてきました。
★部会では…
「こんなに労働者がひどい目にあっているとは身近ではなく、知らなかった。」
「自粛」が叫ばれる中で、安倍政権の「緊急事態宣言」によって解雇されたりシフトが減り、収入が激減する労働者・学生、その貧困についての新聞記事を読み、私たちの視野を広げてきました。
 「前首相・安倍のあとを継いで、当時官房長官を務めた菅が首相の座についた。そして菅政権の感染対策を全く無視した政策の下で第3波とも呼ばれるほどに感染者数が激増した。感染者数が増加しているにもかかわらず、医療現場への支援は行われず、それどころかGOTOキャンペーンを継続し続けさらなる感染者数増大の原因を作り出した。」「入院先が見つからず、自宅待機をしなければならない人が大勢いるにもかかわらず、菅政権は、病院の統廃合の方針を継続している。」「菅政権は『グリーン』『デジタル社会の創造』に血道をあげ、苦しんでいる感染者や医療労働者に対して無視を決め込んでいる。社会保障を『経済成長』や『国防』などの足かせだとして人命を無視した政策を取り続けていることを許してはいけないと思った」。
 
●パンデミック下で熾烈化する米ー中の核戦力強化競争
1、コロナの感染が拡大するもとで激しさを増す米ー中の軍事的角逐
 ―2020年2月~4月末までの米中相互の軍艦の活発な動き
2、没落を露わにするアメリカとそれを追い越そうとする中国との相互対抗的な核戦力の強化競争ー東アジアで核弾頭を搭載可能な中距離ミサイルの配備の強化が行われていることについてなど
3、激しくぶつかり合う米ー中のはざまで安倍政権は・・・? 日米安保同盟の強化
★部会では…
 コロナ・パンデミックの下で起きている戦争の危機を見てきました。
「私たちはコロナを何とかしないと、と考えているけど、アメリカや中国の政府はこの機会に軍事的にぶつかり合うということを考えている。私たちと考えていることは全然違うんだなぁ」
 
●政府・自民党の「敵基地攻撃能力の保有」の問題性を考える   2020年8月4日に自民党が発表した「国民を守るための抑止力向上に関する提言」について検討。その特徴は日米が共同して軍事体制を構築することにある。(A)日米一体となった「敵基地攻撃」の軍事作戦構想、(B)日米の南西諸島における対中国の軍事作戦構想、の二つについて検討。現時点の中国・ロシア・北朝鮮のミサイル発射や新型ミサイル開発などは、日米が共同してつくってきたMD(「ミサイル防衛」)システムを突破する動きであること。これに対して日本がいま「敵基地攻撃」のための軍事体制を構築しようとしていること。さらに自民党が「提言」で主張していことについて活発な論議になった。
★部会では…
 日米と中露との相互対抗関係について着目して「向こうに対抗するとして敵基地攻撃を導入する、というのはこっちから攻撃するということになる。いたちごっこのよう。」「(日本の軍拡の危険性について)友だちから『もっと現実を見ろ』と反論される。でもそれは『現実』がどうこうではない。『中国や北朝鮮がミサイルを向けてくる』という主張には、日米の軍事的準備のことが見えなくさせられている。」
 
●寿都町・神恵内村の“核ゴミ”廃棄物最終処分場の「文献調査」応募問題を考える
 2020年10月8日、後志管内の寿都町町長が正式に「核のゴミ」(高レベル核廃棄物)の最終処分場の「文献調査」に応募。翌10月9日には同管内の神恵内村村長が、政府・経産省の「文献調査」の受け入れを表明した。
 住民である漁師や労働者からの「処分場にされてしまう」「風評被害をまねく」など反対や懸念の声を無視して。
 政府・経産省が、巨額の交付金を餌に困窮する自治体に”核のゴミ”(原発の使用済み核燃料を再処理して出る高レベル核廃棄物)の最終処分地決定にむけた「文献調査」への応募をプロモートした。
 それは、東日本大震災で深刻な原発核事故を引き起こしたにもかかわらず、原発を「ベースロード電源」と位置付ける政府が原発を再稼働していくために、使用済み核燃料の再処理・処分を加速させている。
★部会では…
 「『核のゴミが生じている以上、どこかで処分しなければいけない』という主張を鵜呑みにしていいのだろうか?」「処分といっても、”核のゴミ”といっても死の灰を安全にする技術がない以上、住民の不安や懸念を無視することはできないんじゃないか。」「何のための”核のゴミ”の最終処分場なのか? 原発を再稼働させるためではないのか?」「原発再稼働こそが問題じゃないか。」